変わらぬ空の様に





グレイル傭兵団の砦。



此処は、依然からずっと変わっていない。
この砦から見る空も、此処に来た時と全くと言って良い程変わらない。

此処へ来てから、一体どのくらい経ったのだろう。
数えた事も、無かった。


……けれど、そこに住む自分達は変わった。




少なくとも、オスカーはそう思う。

元団長は、クリミア戦争の中の一事件で亡くなった。
そして亡き父の後を継いだ現団長アイクは、今やクリミアの英雄となっている。
傭兵団の皆も、約一年の戦争の中で、ずっと変わった。
………自分の弟達も、そう。





それは兄として、嬉しい事。
自分から離れて、自立していく第一歩。
現に今も依然より、ずっとずっと、目覚ましい成長を見せている。

本当に喜ばしい事だし、それは自分の願いでもある。
自分の弟達が、立派に育ってくれる事。

けれど、今…今まで、ずっと一緒に居た弟達と、いざ別の道を進むとなったら、自分はどう思うのだろう。
そう考えてしまうと、とても複雑で、素直に喜ぶ事が出来なかった。





「………」
吐き出したい、苦い思いをぐっと飲み込む。
胸の奥が、きゅっと締めつけられる思いがする。


……でも、弟達の人生は、自分の人生とは違う。
いつまでもいっしょに居られるなんて兄弟は、珍しいだろう。

だったら、兄として今出来る事は?
弟達が立派に自立して、それぞれの道に歩んでいく前に。
私が…してやれる事は?

答えは…もう出ている筈なのに。
何故か、苦しくなって空から顔を背けた。
















「あ! 兄さん、聞いてよっ、僕今日ね……」
「おいチビっ、待てよ!俺だって……」
「チビって言うなっ! この脳無し!!」
「んだとぉぉっ!!」


仕事から帰ってきた弟達は、すぐにオスカーの目の前で喧嘩を始めた。
そのあいかわらずの光景に、オスカーは思わず苦笑いしてしまう。

……本当に、こんな所だけは変わっていない。

こんな二人の姿を見ていると、さっきまで悩んでいたのが嘘の様に晴れてしまった。


「……兄さん?」

「兄貴?」

自分達の兄が何か不思議な表情をしているのに気付き、二人は思わず喧嘩を止めた。







「おかえり」




今も…これからも私がしてやれる事は、きっとまだたくさんある。
そう思うと、それだけで笑顔が零れた。


だから今は、共に笑い合える事を大切にしよう、と思った。







End
3兄弟のほのぼのな小話でしたー! ふふ、こういうのが良く似合ってて好きですv
オスカーは優しい兄ちゃんで、ボーレとヨファは元気な弟達、とっても素敵な関係ですよね〜?
書いてて楽しい兄弟達です♪♪♪



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